NTT LABORATORIES

IoT時代のネットワーク KITT

あなたが欲しいデータを
AIが見つけてきます

IoTが爆発的に普及し、世界中で無数のネットワークデバイスが利用される時代がやってくる。
しかしそうした時代になった時、自分が本当に使いたい情報を、無数のデバイスから選び出してくることは非常に困難となってしまう。情報を見つけ出すためには、ネットワークの垣根を越えて、地球上のあらゆるデバイスが生成する情報の内容を解析し、「必要とする情報を持つデバイス」を特定することが必要だ。
ネットワークサービスシステム研究所の中に、そんな新時代の夢に挑戦する研究者グループがある。

縦割りから水平へ

ネットワークサービスシステム研究所内で先鋭的なネットワークシステムの実現に挑戦しているチームがある。
現在、世界中にはインターネットに接続している端末が600億個あると言われている。しかし今後、IoTが普及していけば、その数は飛躍的に増大し、無数の端末がインターネットに接続されることになることが予想されている。それらの端末はインターネットにつながってはいるものの、各サービス事業者のプラットフォームに縛られ、その壁を越えてつながり合うことはない。この縦割りの壁を壊し、サービスやデバイスを水平方向につないで、より大きなリソースとして社会的に活用しようというのが、その挑戦だ。
「現在のIoTネットワークではサービス事業者ごとにプラットフォームが乱立し、その中でデータは管理されています。この壁を越え、リソースとして水平方向につなぐためには、従来サービス事業者ごとに管理されていたデバイスやデータを見つけ出す方法を考えなければなりません。そこで、デバイスが生成する情報をネットワークに捉われずに解析することで、必要とするデバイスを見つけ出すアプローチを考案して、その解決を図っています」。
そう話すのは、中心的存在として研究チームを牽引する干川尚人だ。

これまで消失していたデータを活用する

「仮に世界に600億のIoTデバイスがインターネットにつながっていて、それらが画像や映像など、さまざまな情報を有していたとしても、あらかじめ決まった目的のためにつながり合っている場合、デバイスが生成する情報は特定の情報のみネットワークを介して送信されるだけでした。
そのため大部分の情報は送信されずに眠っていて、ネットの中で静かに消え去っていきます。またデータを利用したい側にとっても、そもそも、どこにどんなデータがあるのか知る術もなく、求めるデータにアクセスできない可能性が高いと言えます。しかしネットワーク間を相互に連携し、さまざまな用途にデータを活用する場合は、その『眠っている』情報を活用する必要があります。これまで消失していたデータを多用途に活用し、機器同士の通信を促すことで新たな情報処理を生み出すことが、私たちの目標です」。
例えばサッカー場に数多くのカメラが設置され、観客もスマホを手に動画を撮影していたとする。従来であれば、カメラの映像も観客のスマホデータも各々のサービスに用いられるだけで共有されることはない。
この研究は、そうしたデータを集め、ユーザが「○○選手の映像」と入力をすると、AIがネットワークワイドに点在するカメラやスマホの情報を分散して解析し、求める映像情報を持っているデバイスを見つけ出しその映像を自動的に映し出す。そのようなイメージのシステムだ。今後、膨大に増えていくデバイスやデータを相互活用しシェアしていくためには、このようにデバイスが生成する情報を解析して、他サービスやデバイスが求める機器を見つけ出していくことが必要となってくる。

データをシェアする時代へ

本研究のチームでは「まったく新しい取り組みに挑戦しよう」という気概の下、自由参加の勉強会から始まり、研究テーマが決まるまでにおよそ1~2年の時間を要したという。そうしている間に世界ではシェアリングエコノミーが一般的な文化として定着しつつあり、ITの世界ではAIの話題が盛んに取り上げられるようになった。現在、研究されている内容も、IoTデバイスが持つデータをAIに管理させて、社会的にシェアしていこうというもの。最先端の取り組みに挑戦しようとしていた彼らの挑戦に対し、時代が後から追いついてきているような感じさえある。
現時点で研究は、見たいもののキーワードを入力すると、それを“今”撮っている、カメラやスマートフォンを見つけ出し、映像を表示するというデモンストレーションを実現するところまでたどりついた。今後はより広いネットワークでデータを集め、解析、抽出するために、研究技術のさらなる進化が必要となる。
「ソフトやプログラム、AI、デバイスが有機的につながり、それぞれが脳神経のように機能して最適解を生み出していくのが『ネットワークAI』です。ネットワークAIは、さまざまな目的でつくられた無数のプログラム、AI、デバイスをネットワークでつなぎ合わせ、全体最適を図っていく仕組みであり、現在、私たちが取り組んでいるのはその第一歩となる研究です(干川)。
サービス事業者のプラットフォームを飛び越え、データをシェアし、新しい価値を生み出していこうという、 このまったく新しい挑戦はまだ始まったばかりだ。今までの常識を打ち壊すような画期的な仕組みの実現まで、彼らの挑戦は止むことなく、これからも続いていく。

Profile

干川 尚人
2009年入社。もともとハードウェアやソフトウェアに強い興味を持っていたことから、ネットワークサービス開発の仕事へ。
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