人工知能(AI)という言葉が社会に浸透し、現在、さまざまなビジネスシーンでその活用が模索されている。例えば保険会社のようにBtoCサービスを行う企業では、顧客からの問い合わせに対しコンタクトセンタを構えるなどして、膨大なコストを割いて応えている。もし、これをAIで代替できれば、そこに割かれた労力を別の方向に活用することができるのではないか。
西田京介らが研究を進める高度な機械読解の能力を有したAIによる自動応対技術は、そうした空想を現実に変えるテクノロジーだ。
「私たちのチームでは、究極的には、質問すれば何でも答えてくれるAIの実現をめざしています」(野本)
コンタクトセンタで活躍するオペレーターは、相手の問いを理解し、回答のリソースを見出し、それを根拠に相手が求める回答の形に整え、意味が通じる形で伝えるという作業をごく自然にこなしている。それをAIの自動応対で代替しようとすれば、機械にも相応の多様な能力を与えなければならない。
テキストを読み解き問い合わせに
自動応対する人工知能
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人間情報研究所
西田 京介、野本 済央、斉藤 いつみ、大塚 淳史、
西田 光甫、長谷川 拓、大杉 康仁
01.オペレーターに代わり得る自動応対AI
02.ハイレベルな研究を組み合わせる
西田京介らのチームでは各自が分担して自動応対AIの実現をめざしているが、全員が共通して「機械読解」に関連する技術に取り組んでいる。
「機械読解は、テキストや質問に書かれた『人間のことば(自然言語)』を理解してユーザからの質問に答える技術です。私は、機械読解のための新しいニューラルネットワークモデルを提案することで、これまでできなかった、大規模なテキストからの機械読解や、テキストに書いてない表現を自分で『生成』して応対する技術を研究しています」(西田京介)
野本の担当の一部は「チャットボットへの技術導入」だ。
「私の担当の一つは、問いに適切に回答できるチャットボットへの技術の導入です。ドキュメントを賢く検索して端的な回答を示したり、その根拠を示したりするボットをビジネス現場の協力を得ながら研究しています」(野本)
人間が行うあいまいな質問に対応する技術は大塚が担っている。
「人間のオペレーターの対応を見ていて、あいまいな質問に対して、すべて明確に回答する必要はないのではないかと気づきました。システムがあいまいな質問内容を理解した上で『こう質問してくれれば答えられるよ』と提示できる技術の実現をめざしています」(大塚)
斉藤が担当するのは回答を適切な形に要約する技術だ。
「PCなら長い回答でも一気に閲覧できますが、スマホだと難しい。与えられた状況を理解して、柔軟に制御可能な要約技術の開発を進めています」(斉藤)
ユーザの質問には内容によって、AIから与えられた答えを見ただけでは理解しにくいものがある。
「システムが回答だけでなく『回答の根拠や自信度』を提示することで、ユーザにしっかりと回答の確度を示す研究を行っています」(西田光甫)
03.メンバーと共に世界トップの技術を実現
チームにいる若手もこうしたメンバーの研究姿勢に大いに刺激を受けるという。
「先輩方が仮説や目標を立て、そこにしっかりとアプローチしていく姿を間近で見て、研究に向き合う姿勢を学んでいます」(長谷川)
「研究する上で、単に学術的なトップをめざすのではなく、そこを達成した上でさらに実用を見据えた発想を持っている姿勢にやりがいを感じています」(大杉)
「私たちのチームは海外の複数の機械読解コンペティションで世界1位の精度を達成しています。チームの優秀なメンバーと共に極めてコンペティティブな分野で世界と日々戦いながら、自動応対AIの完成をめざしていきたいと考えています」(西田京介)
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ヒトを情報通信処理可能にする
リアル・サイバー共生世界における人間中心の豊かな社会実現をめざし、「人間中心を基本原則として、ヒトを情報通信処理可能にする」ことをミッションとし研究開発を推進しています。人の知覚・思考・感情・身体・行動などの情報通信処理、すなわち、データ化とアルゴリズム化を、人工知能、集団思考・行動分析、サイバネティクス、メディア処理、空間情報処理、マンマシンインタフェースといったテクノロジーを強みに、認知科学、心理学、デザイン、アートなどを組み合わせ、学際的・総合的に取り組んでいます。
※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、
旧研究所名の場合がございます。