人間の心理を
解き明かすことで、
社会問題解決に向けた
科学的知見を確立したい
村田 藍子コミュニケーション科学基礎研究所
人間は他者の感情を感じ取り、その認知に基づいた行動を取ることができる社会的動物である。
社会心理学研究を通じて「社会的課題にアプローチする科学的知見を提供する研究者」をめざす村田は、
どのような想いで日々の研究に向き合っているのだろうか。
人の情動的な共感はなぜ発生するのか
「人は社会的動物である」と言われるように、社会の中で多くの他者と関わりながら生きています。人類は進化の過程で、社会的環境に適応するために認知と行動の特性を獲得してきたと考えられています。そうしたことに関心があったため、大学では人々のインタラクションや、それを可能にする認知・行動メカニズムを捉える社会心理学を専攻していました。
昔から心理学に興味を持っており、高校生の頃は臨床心理士になるか、基礎研究をするかで悩んでいました。しかし、学びの過程で理論を実践する臨床よりも検証する基礎研究に興味が向き、人間の情動的な共感の起こり方について研究することに決めました。
ウェルビーイングの評価・促進、さらに新しい研究へ
NTTの研究所への入社は、シンポジウムで偶然にもコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊上席特別研究員と出会い、その後共同研究を行う機会を得たことがきっかけです。その後、ご縁をいただいてRA(ポスドク研究員)として入所し、それまで行ってきた対人インタラクション中に共感が生じるメカニズムの解明をめざす研究に加えて、人々のウェルビーイングの評価・促進をめざすプロジェクトの推進に携わってきました。その後、中途でNTT 研究所に入社してからも継続して、同様の研究を行っています。また、現在は、人の共感メカニズムの研究をさらに広げ、集団における高度な協調行動と共感の関係性についての研究プロジェクトを立ち上げる準備を進めています。
人間にしかできない優れた協調行動
例えば、集団でのダンスのような優れた協調行動は人間にしかできません。素人ではバラバラのダンスが、上級者になると互いの動きを瞬時に捉え、見事に動きを合わせることができる。そしてさらに一流の集団になると、ただ合わせるだけではなく、協調した中に個性を表現できるようになる。そうした協調性の違いが身体にどのように現れているのかなどを、今後は異分野の研究者らと協力しながら解き明かしていきたいと考えています。
社会心理の研究を通じて、個人・集団・社会それぞれのスケールで人間の認知・行動特性を明らかにする社会科学と、人と人とをさまざまな形でつなぐ情報工学の架け橋となって、実際の社会的課題にアプローチする科学的知見を提供する研究者をめざしています。
- 村田 藍子
- 2020年入社。NTT研究所は好奇心にもとづいて、わくわくしながら、自分にしかできない貢献を果たすことができる環境だと感じているという。休日は愛犬と公園を散歩したりしながらリラックスして、研究への鋭意を養っている。
※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、
旧研究所名の場合がございます。