大川は人の流れ、自動車などの流れを予測するための機械学習技術について研究を重ねている。一昨年には巨大イベントで参加者の軌跡データを分析する「人流」の実験を行った。GPSを利用して集めた軌跡データは参加者の3%分だったが、それでもマップ上にトレースすると非常にごちゃついたものとなる。大川はアルゴリズムを駆使し、より多くの人が動いた「代表軌跡」をパラメーターごとに抽出できるシステムを開発。ユーザが見たいように人流を可視化できる仕組みを作成した。
「人の流れは自由意思の積み重ねでできているので、それをモデリングをするのは非常に困難です。そこでタイムスケジュールや会場構造など、データの裏側にある仕組みを把握して分析モデルに導入することが重要でした」
こうして得られた人流予測データは、混雑箇所の事故を未然に防ぎ、混雑の原因を特定して適切な誘導策の選定に役立てるなどに活用されていくことになる。
個性を活かした幅広い視野で
将来性の高いテーマを
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人間情報研究所
大川 真耶
Research Develorer
大川が研究しているのは、多くの人や自動車などがどのように行動し、どのような流れを生み出すのかを分析し、自動的に予測する技術だ。
サイエンスの視点で鋭くテーマに切り込み、ビジネスの視点で将来の商用可能性を拡大する。
未来世界に貢献する技術の実現をめざし、日々研究に取り組んでいる。
01.Technology
人の流れを予測して事故を未然に防ぐ
02.Personality
サイエンスと実用性を両立させて
大川の学生時代の専攻は基礎物理学で、現在の専門である機械学習については強く関心を抱いているだけという状態だった。
「入社後は、自ら講師を依頼して勉強会を企画したり、とにかく論文を読んだり、機械学習に強くなろうと必死で勉強に励みました。もともと興味のある分野に対する勉強は好きだったので、周囲の助けにも恵まれて非常に楽しく学ぶことができました。今も勉強中ですが、他分野出身だからこそ見えることもあるだろうと思い、新しいジャンルでの挑戦を楽しんでいます」
積極的に学ぶ姿勢は、世界との競争をも睨む。機械学習は世界的に研究が盛んな分野である。研究を通じて社会的なインパクトを残すには、技術的に優れていると同時に、将来の実用性を見越した戦略的なテーマを設定することが重要だ。
「サイエンスと実用性。その二つの視点を両立させて、国際的な評価を獲得しつつ、NTTの事業にとっても有用である成果を残していきたいですね」
PROFILE
- 大川 真耶
- 2014年入社。大学院時代にはCERN(欧州原子核研究機構)で「ヒッグス粒子」の性質測定に携わっていた。
※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、
旧研究所名の場合がございます。