効率的なグラフデータ処理技術の研究に取り組んでいる新井。物事のつながりを表現する「グラフ」を精緻に分析していくことで、まだ存在していないが将来において起こり得るつながりを発見する可能性を高めている。例えば、SNSやECなどの情報を基に人気のある店を見つける、人々のつながりを分析して悪意をもった集団を見つける、さらに人に限らず交通の予測、分子の挙動の予測など、さまざまな分野で未来を予測する上でグラフ分析は重要な技術だ。
「大規模なグラフデータを計算機で効率的に取り扱うには工夫が必要です。私が主に取り組んでいるのは、部分グラフ検索の高速化です。グラフの中から特定のつながりを素早く検索する技術ですが、これは既存のコンピュータで扱うにはあまりにも計算処理に負荷がかかりすぎる「NP困難」に分類されるテーマ。そこで私は処理にかかる負担を軽減するため、ヒットしないことが見込まれる“検索する必要のない領域”を特定することで、検索を高速化する技術に取り組んでいます」
NP困難とされる
グラフ検索高速化に挑む
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コンピュータ&データサイエンス研究所
新井 淳也
Research Develorer
世の中のさまざまな情報を「点」として表現し、そのつながりを捉えるグラフ分析は、将来における新たなつながりや集団の予測を可能にする。
そのための基礎技術であるグラフ検索は既存の半導体コンピュータでは負荷が高く、効率化が難しいとされる。それでも、新井はよりゆとりある社会の実現にむけて自分を信じ挑戦を重ねる。
01.Technology
グラフ検索の高速化に挑む
02.Personality
「自分にはできる」とつねに信じて
「プログラムを速くすることが楽しい」と新井は話す。すでに多くの研究者が挑んでおり、その困難性が自明なテーマであったとしても、自分らしい工夫をこらし、挑戦を重ねていく。ムーアの法則の終焉が叫ばれ、事実、半導体コンピュータの性能向上は鈍化しているのが現状。そのため、ソフトウェア技術の側面から性能を最大限引き出す方法について世界中でさまざまな工夫が行われています。一朝一夕で何か成果が生まれるものではなく、研究過程ではときに挫折もあるという。しかし、ソフトウェアのアルゴリズム改良によって、テクノロジーの成長スピードを後押ししていくため、新井は懸命に研究をつづけていく。
「グラフ処理の高速化が実現すれば、私たちの生活にはよりゆとりが生まれ、安全なものになるはずです。どちらかといえば悲観的な性格ではあるのですが、たとえ世界中の研究者が大きな壁に阻まれている領域であったとしても『自分にはできる』と信じてトライ&エラーを繰り返しています。グラフ処理の高速化を含め、他にもやるべきことはまだまだたくさんあります。だからこそ、今後もNTTの仲間とともにチャレンジを重ね、大きな成果を残していきたいと考えています」
PROFILE
- 新井 淳也
- 2013年入社。計算機研究領域でのNTTの実績と自由闊達に研究に取り組む研究所の雰囲気に魅力を感じ当社へ入社。
※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、
旧研究所名の場合がございます。