IOWN構想でうたわれるAPN(All Photonics Network)の実現に必要不可欠な光電融合デバイスの設計・作製や評価、さらには量産化技術に関する研究が前田の担う役割だ。光導波路や光フィルタなどを高密度かつ低コストに実現可能な “シリコン”と半導体レーザの作製に不可欠な“化合物半導体”という異種材料を組み合わせて、光送受信機を作製する。低消費電力かつ高速に動作する薄膜(メンブレン)光デバイスをシリコン光回路上に集積した光送受信機の完成をめざすと同時に、その量産化を見据えた効率的な作製技術にも前田は挑んでいる。
「薄膜レーザとシリコン光回路を別々に作製した後に、スタンプと呼ぶ透明な樹脂を用いて、対象物をピックアンドプレースする「転写プリント法(Micro-transfer printing法)」で、光送受信機を作製する手法を研究開発しています。超低消費電力で高速に動作する光送受信機が量産され、従来の光通信の領域を超えて適用されることで、データの処理や伝送にかかる電子機器、演算装置の高速化と低消費電力化が実現できます。グループとしてめざす『ゲームチェンジ』の一端を担うことができる技術だと考えています」
ゲームチェンジャーとなる
光電融合デバイスをつくる
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先端集積デバ イス研究所
前田 圭穂
Research Develorer
端末から端末へとつながるネットワークすべてが光信号によって構成されるAPN(All Photonics Network)の実現に向けて、重要な要素の一つが光電融合デバイスだ。
前田は、長距離通信で培った光の技術を短距離にも適用する光電融合の研究開発で、デバイスの高い性能ばかりではなく、どのようにしてつくるかをも追究する。
01.Technology
量産しやすさをも見据えた
異種材料集積技術
02.Personality
「知りたい・やってみたい」を原動力に
前田の開発する「転写プリント法」は非常にシンプルであり、シールを貼ったり剥がしたりするようなイメージで、完成したデバイスを集積先の基板上に高い位置精度で自在に転写できる手法。これまで、シリコン光回路上に集積された化合物半導体レーザなどの光デバイスは、予めシリコン光回路上に化合物半導体結晶を貼り合わせたあとに、微細加工を施す手法で実現されてきた。一方、「転写プリント法」では、各デバイスをそれぞれの最適条件下で作製できるため、高品質なもの同士を選んで集積することができ、製造コストが大幅に軽減できるという。さらに、複数デバイスの一括転写による効率化ができることや、集積後の複雑な微細加工プロセスの開発が不要であることから、研究開発からプロトタイピング、量産への橋渡しが比較的容易であるという。独創性ある前田の挑戦によって「ゲームチェンジ」に一歩近づいていく。
「研究していく上で大切にしているのは、『知りたい・やってみたい』という好奇心です。すでに枯れた技術も少し視点を変えれば新しい技術となって、局面を変えることができるかもしれません。仲間とともにアイデアの創出と検証に挑んで、まずは好奇心の赴くままにやってみようと考えています。こうして生まれたものが、新しい社会の構築に役立てられれば、すごくうれしいですね」
PROFILE
- 前田 圭穂
- 2014年入社。有限な時間とチャンスを活かすため、周りを上手く頼り、協力しながら仕事を楽しんでいきたい。
※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、
旧研究所名の場合がございます。