自らの探求テーマに向き合い
多様なアプローチが認められた環境

Profile
Lewis Ruks
物性科学基礎研究所
キャリア:大学院大学→ポスドク→NTT R&D
物性基礎科学研究所(以下、物性研)がある厚木周辺は、東京へのアクセスも、小田原や箱根などの自然や観光地へも近く、日本文化を味わう機会も充実。パートナーの奥様とともに、夏のお祭りめぐりも。
01.トップレベルでありながらのびのび
英国北西部のプレストン出身で、オックスフォード大学で数学を学んでいました。大学生の頃に日本語学習が趣味になり、「数学がそのまま物理の中でどう機能するのか」を実感しながら日本語環境に身を置けるという魅力を感じて沖縄科学技術大学院大学(OIST)の博士課程に進学。そこで量子光学を専攻しました。
NTT R&Dに進んだのは、後に妻となる当時の彼女がインターンの存在を教えてくれたのがきっかけです。企業研究所でありながら基礎研究に重きを置いている点に魅力を感じました。実際、調べてみると以前から読んでいた論文の著者にも物性研の方が大勢いることにも気づきました。ショートインターンに参加してみるとトップレベルの研究をしていながらピリピリしていない雰囲気が自分には合い、その後ポスドクを経て、2025年からは正社員として研究に励んでいます。
02.光を介した相互作用の研究に従事
現在は、光を介して相互作用する原子の量子系を中心に、微視的な理論モデルの構築をテーマとして、アイデアの探索から数理・数値実験、物性研の計算環境を使った検証、論文執筆まで、理論研究を一通り自分で回しています。近年は実験技術や各種装置の進歩により原子系を、思いのままに制御することが可能になったので、原子同士の相互作用が積み重なって現れる集団的な光学応答を、理論と実験の両面から探求できるようになりました。
思いがけず現れる新しい現象に出会ったり、理論の枠を広げて、実験手法や新たなシミュレーション手法探求など、時間をかけて複数のアプローチを試みることが許された環境ですから、一つのテーマを深く掘り下げつつ視野を広く保つことができ、飽きずに楽しく研究に取り組めています。
03.周囲の仲間とともに、さらなる未来へ
物性研で研究に従事していて感じる一番の魅力は、自由度の高さと長期的な視点で研究に取り組める環境です。短期間での論文発表を求められるなど、目先の成果に追われることも私の環境ではありません。2025年には「Negative refraction of light in an atomic medium(原子格子系における光の負の屈折)」と題した研究論文が「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。これも1年半から2年ほど、共同研究者とともに腰を据えて行った長期的なプロジェクトで、そうした研究に取り組むことが許容される風土があります。
物性研は扱う研究テーマが幅広く、それぞれに優れた研究者が揃っている一方で、組織としては非常にコンパクトで議論がしやすい点も良いところだと感じています。今後も物性研のメンバーや訪問研究者やインターンの方々との協働の機会を増やし、微視的モデリングに基づく理論コミュニティをさらに発展させ、理論から実験、そして技術へとつながるNTTの研究の流れをより強くしていくことに貢献したいと思っています。
※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、
旧研究所名の場合がございます。